犬文字に寄せて
犬文字に寄せて_e0162117_9232391.jpg今日の北鹿新聞の文化欄に
わたしの投稿が掲載されています。「犬文字」の「`」の意味をできるだけ多くの方に知っていただきたいと思って書いています。今日はその全文を紹介いたします。
掲載してくださった北鹿新聞に感謝いたします。
(以下掲載文)

日本で一番有名な犬といえば? それは間違いなくハチ公ではないでしょうか。
わたしはそのハチ公の生まれ故郷、大館に暮らすことをとても誇りに思っています。 
それともう一つの大事なこと、それは大館は秋田犬(あきたいぬ)の発祥の地だということです。ハチ公の故郷だということは知っていても、秋田犬の発祥の地であることを大館市民でも知らない人は大勢います。その文化的価値は、大館が秋田犬の発祥の地であることを、多くの人々に知っていただくことで開花するのではないでしょうか。
 
秋田犬は、昭和6年に天然記念物犬種の第一号に選ばれている優れた国犬です。つまり
名誉ある日本の国犬の第一号が秋田犬であり、その犬種が生まれたのが大館なのです。秋田犬こそ、「忠実」と「癒し」という極めて現代人が必要としている心のあり方そのものです。

大館は犬にゆかりの多い町です。大館市葛原地区の『老犬神社』では祀られている
忠犬シロとマタギ定六の哀話が伝えられ、犬の玩具が多数奉納されています。
三重苦の障害を克服した奇跡の人、ヘレン・ケラーと盲目の世界的なアーチストのスティービー・ワンダーは秋田犬の愛犬家です。
お二人に共通するのは、目では見ることができない「心眼」で犬を選ばれたということです。
しかも、どうしても本場の秋田からから譲り受けたいと希望されたそうです。
そういう特別な土地に暮らしていることの有難さをもっと多くの市民の方々に自覚していただけたならと思います。
信頼できる飼い主と出会い、献身的に働くことが犬としての幸せなのだと聞いたことがあります。ハチ公が上野教授と過ごした一年余り、そして帰らぬ教授を待ち続けたその10倍もの年月。ハチ公の一生を思えば胸が詰まりそうになるのですが、その真っすぐな愛情を持てたことがハチにとっての幸せだったと思いたいです。
このハチ公が、犬と人間との関わりの象徴として貢献している絶大なる存在になっていると思います。 「献身」「貢献」これらの漢字には「犬」という字が書かれるように、身を捧げて一生待ち続けるハチ公の姿は、真実の愛を教えてくれているのではないでしょうか。

1934年に渋谷の駅前にハチ公の銅像が建てられ、翌年の1935年に大館の駅前にハチ公の銅像が建てられました。
毎年8月16日に行われる京都の大文字の送り火は平安時代がその起源と言われています。大館の大文字焼きは昭和43年から始まりPRのための行事で当初は8月6日に行われていました。残念なことに大館のハチ公像も大文字も後発のもので、大館独自のアピールができているとは思えません。けれども、今年多くの方々の尽力により、正真正銘の「大館が初」の行事が行われようとしております。
全国ニュースでもその特異性を取り上げられ、たびたび紹介されている「犬文字」企画です。
わたしはとても不思議に思うのです。大館の「大」の字に一画「`」を加えると大館の代名詞とも言えるハチ公の「犬」になることが・・・。
あらゆることには必然性が隠れています。この不思議な「大」と「犬」の関係にどういう必然性があるのだろうかと最近ずっと考えていました。
そして、さまざまにリサーチを繰り返しているうちに思い当たったことがあるのです。
 
それは、ハチ公像が渋谷に建てられた1934年の同年、天皇陛下(昭和天皇)にハチ公像が献上されていることです。天皇陛下はハチ公に一度会ってみたいと仰ったそうなのですが、
当時のハチ公は野良犬化しており、とてもお見せできる状態ではありませんでした。
事情を聞いたハチ公研究家でもあった大館の木村泰治氏が自費でハチ公像を3体製作し、
その一体を献上されたそうです。
そして、残りの一体を上野教授宅へ、一体をご自宅に置かれたそうです。
それから70年余りの歳月が流れた昨年6月14日、平成天皇が秋北ホテルに宿泊された時のエピソードです。当日の陛下のお部屋に生けられたお花のとなりには、木村氏のご好意によりハチ公像が飾られたそうです。陛下はそのハチ公像をご覧になられ、とても感激されたご様子で、皇居にあるハチ公像がどうしてここにあるのかとても驚かれたそうです。
昭和天皇と平成天皇の両陛下のお心にハチ公がお在りになることと、皇居にハチ公像が有ることの「奇跡」を感ぜずにはいられません。
ハチ公はそれほどまでに尊い犬です。「犬文字」は、ただ単純にハリウッドでリメイクされることに便乗するのではなく、世界各国で愛されている秋田犬の発祥の地、大館がこの世界的ムーブメントに深く関わっていることの再確認イベントだと思うのです。

大館を離れた地で大館を語る時、何よりも誇れるのはハチ公の故郷だということではないでしょうか。
大館の有名人を聞かれたら、真っ先に思い浮かぶのは「人」ではなく、「犬」のハチ公です。
そのハチ公が残してくれた真っすぐな心を受け継ぐことが大事だと思います。
「犬文字」を見て、歓喜の声をあげる子供たちがつくる大館の未来は、明るい幸せに向かっているように思えてなりません。
いつの日かハチ公が大館市の「名誉市民」として顕彰され、市民の精神の石杖となることを願って、今年の8月8日の8日後の午後8時8分の「犬文字」を見たいと思います。
永い永い年月を経た今も日本人の心に確かに息づいているばかりでなく、
この夏、わたしたちのハチ公は世界の伝説になろうとしています。
by bull_chihoko | 2009-07-30 09:24 | 大館関連
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